トランプを信用しないNARAの「プロの勘」
米連邦捜査局(FBI)が8月8日、ドナルド・トランプ前大統領のフロリダ州にある私邸「マール・ア・ラーゴ」を家宅捜索した。
前大統領に対する強制捜査という米史上初めての事件は、2つの問題点を米国民に突きつけている。
一つは、FBIの捜索の目的、今後の司法の動き、そして押収した国家機密文書の詳細な中身だ。
もう一点は、トランプ氏がなぜ退任時にこれだけの国家機密文書を持ち出し隠匿していたのか、という点だ。
司法省は、米国立公文書記録管理局(NARA)からの要請を受けて早い段階から水面下で動いていた。
トランプ氏が2021年1月、大統領を退任してホワイトハウスを去る際、公務に関連する機密文書などの記録を大量に「マール・ア・ラーゴ」の私邸に持ち帰ったことをキャッチしていたのである。
大統領は退任時、公務に関するすべての機密文書をNARAに提出する義務がある。そのことをトランプ氏が知らぬわけがない。
結局、トランプ氏は、2022年1月中旬、15箱分の機密文書を渋々(?)NARAに提出した。正確には「返還」した。
これらの中には、バラク・オバマ元大統領からの引き継ぎ文書や、トランプ氏と北朝鮮の金正恩総書記との間の通信記録なども含まれていたとされている。
NARAは、この時にすべての書類が返還されていないことを察知していた。そして司法省に調査するよう再要請した。まさに「プロの勘」だった。
司法省傘下のFBIは、重要な機密文書がまだトランプ氏が隠匿しているとみて、内偵を開始。