8月3日に台湾を訪問したペロシ米下院議長と台湾の蔡英文総統(提供:Taiwan Presidential Office/AP/アフロ)

(ジャーナリスト:吉村剛史)

 ペロシ米下院議長の台湾訪問を機に、台湾周辺海域で弾道ミサイル発射を含む大規模軍事演習を展開した中国。演習終了後も中国軍機が台湾海峡の中間線を越える飛行を継続し、軍事的圧力の常態化を目論んでいると思われる。

 ただ、一連の大規模演習に対し、日本では約8割が有事の日本波及を危惧した一方、台湾社会の約8割が中国側の威嚇行動に過ぎないと冷静にとらえていたとみられることが世論調査で明らかになった。

 中国との対峙姿勢に長けた台湾、心理戦に不慣れな日本社会を裏付けたかっこうだ。日本の防衛省ではこうした心理戦を含む「認知領域」を新たに念頭に置いた「領域横断作戦能力」構築のための経費を来年度当初予算の概算要求に盛り込み、中国が進める「全領域戦」に対抗してゆく。

台湾の世論調査、中国軍事演習「怖くなかった」が78.3%

 台湾のシンクタンク「台湾民意基金会」では8月8日、9日に台湾で約1000人を対象に世論調査を実施。このうち「ペロシ氏訪台」に関しては「歓迎した」が52.9%で「歓迎しない」の24%を大きく上回った。「意見なし・わからない」は23%。

 これに起因する中国軍の「軍事演習への恐怖感」に関しては、「怖かった」が17.2%だったのに対し、「怖くなかった」が78.3%、「意見なし・わからない」が4.4%だった。

 また、中国による台湾侵攻への「危機感」に関しては、「あると思う」が39%、「ないと思う」が52.7%だった。「意見なし・わからない」は8.4%。中国の強い不満のなかで実施されたペロシ氏の訪台を歓迎する一方、今回の軍事演習が中国側の威嚇を目的とした行動に過ぎないことも冷静に見抜き、実際の衝突が発生する可能性も高くないと分析していたことがあきらかになった。

 これに対し、日本経済新聞社が8月12日に公表した同社世論調査によると、中国と台湾が軍事衝突したした場合に日本が巻き込まれる可能性について「恐れを感じる」が81%、「恐れは感じない」は14%だったという。