8月16日、視察先の遼寧省で市民に手を振る習近平国家主席(写真:新華社/アフロ)

「9・29日中オンライン首脳会談」――少し前まで誰も予想していなかった「イベント」が、にわかに浮上してきた。

 9月29日は、日中国交正常化50周年記念日である。これを祝して、岸田文雄首相と習近平(しゅう・きんぺい)国家主席が、それぞれ東京と北京から、オンラインで首脳会談を開こうという企画が持ち上がっているようである。

10年前の国交正常化40周年の記念イベントは「尖閣諸島国有化」で吹き飛ぶ

 当初は岸田首相が、安倍晋三元首相の国葬を9月27日に設定したことから、その2日後に大きな日中間のイベントはないと目されていた。国葬には世界中からVIPが来日するので、首相や外相が2日後に北京に飛ぶというのは不可能だからだ。

 また中国側は、私の得た情報では、王岐山(おう・きざん)国家副主席を、安倍元首相の国葬に派遣する予定でいる。そのため、国葬の2日後に習近平主席や王毅(おう・き)国務委員兼外相が来日するということは考えにくい。というより、第20回中国共産党大会が間近に迫っていて、中国側にもそのような余裕はない。そのため、王岐山副主席の訪日をもって、50周年のイベントにしようとしているかに見えた。

 実は10年前の国交正常化40周年の時も、日中は「イベント」を巡って揺れた。その前年の2011年3月11日の東日本大震災では、中国人はまるで自国で起きた災害のように、日本を気遣った。胡錦濤(こ・きんとう)国家主席(当時)は、真っ先に北京の日本大使館に弔問に駆けつけた。私は当時、北京に住んでいたので、当時の日中友好の様子を、身をもって体験している。