間違いだらけの『選択』記事

 上記をご理解戴いた上で、『選択』(2022年8月号)に掲載された「サハリン2 謀略の真相」を概観します。

 この記事は無署名記事なので誰が書いたのか不明ですが、書き手は恐らくロシアに関しても、石油ガスに関しても知見のない人が書いたと思われます。

 筆者はこの記事を何度も読み返しましたが、筆者は頭が悪いのか、何が「謀略」で何が「真相」なのか理解できませんでした。

 この記事の中に「露タス通信や英ロイター通信の記事を和訳しているだけの日本メディアの現地報道は当てにならない」(64頁)と書いてあります。では、あなたの書いたこの記事は当てになるのでしょうか?

 取材内容を何の検証もしないまま垂れ流しにしているのが、あなたの記事ではないでしょうか?

「サハリン2の事業主体がバミューダ法人であることを知っていた記者はどれほどいたか」(64頁)。

 プロジェクト関係者は全員知っています。「知っていない記者」にはあなたも含まれていることでしょう。反省すべきはあなたです。

 付言すれば、本社登録はバミューダですが、事業活動を展開しているサハリン支店はロシア法人です。

 サハリン・エナジー社はPSAに従い、納税しています。

「PSA法とは外資保護法である」(65頁)。違います。PSA法とは「投資家保護法」です。投資家には外資も国内投資家もいます。

「改訂「地下資源法」とPSA法は矛盾する。この矛盾こそ大統領令を正当化する根拠と言っていい。ロシア憲法裁判所には『連邦法に齟齬がある場合は大統領令による解決が可能』という判例がある」(65頁)。

 違います。露連邦法間に齟齬がある場合の露憲法裁判所の判例に言及していますが、PSAには「後日、不利になる法律が制定された場合は適用されない」のですから、この判例は適用されません。

 PSAとはあくまで、将来不利な法律が制定されることを前提に成立しています。ですから、露憲法裁判所判例は適用外です。

「シェルに買い叩かれるまま、LNGの安値枠を差し出したのだ。それをシェルは現在、40ドル前後で売っている」(65頁)。この記事の書き手は、このことを「謀略」と言っているのかもしれません。

 しかし、当時のガス価格は2ドル前後でした。ですから、「安値枠」でも何でもありません。その価格帯が当時の標準価格でしたから。

 現在儲けていることは事実ですが、それは、昨年後半から欧州ガス価格(スポット価格)が高騰したからです。現在高値になっているのは、単なる結果論にすぎません。

「三菱商事は、インドネシアのドンギ・スノロLNGのオペレーターを務めており、シェルの技術者が抜けた穴を埋めることもできる」(66頁)。

 いいえ、できません。気象条件の厳しい海洋鉱区における石油・ガスの探鉱・開発・生産・輸送事業は、欧米メジャーとハリバートンやシュランベルジャーなどのサービス会社抜きには不可能です。

 LNG工場は保守点検・定期修理が必要であり、欧米による対露経済制裁措置が強化されている現状、保守点検・定修を請け負う海外企業は出てこないでしょう。

 取材源の言い分を垂れ流しにしているのはあなたです。あなたには、「露タス通信や英ロイター通信の記事を和訳しているだけの日本メディアの現地報道は当てにならない」と言う資格はありません。

 残念ながら、あなたが誰か筆者には分かりませんが、あなたが名乗り出ればいつでも公開討論会に応じます。