エピローグ
日本向けLNG供給契約の行方は?

 上述の通り、今回のプーチン大統領令416号は、ロシアの法律たる既存PSA条件を否定する内容になります。

 ロシアのS-1とS-2契約は同時にロシアの法律ですから、論理的には「プーチン大統領自ら、ロシアの法律を破った」ことを意味します。

 これが今回の大統領令の不都合な真実です。

 既に、ロシア市場から撤退する外資系企業が続出しています。

 石油サービス企業のハリバートン、シュランベルジャー、ベーカーヒューズ等もロシア市場からの撤退を発表。今後、ロシアの石油・天然ガス生産量低下に直結すること必至です。

 換言すれば、今回の大統領令416号は外資のロシア撤退の動きをさらに加速させることになり、ロシア石油・ガス産業衰退の契機となるでしょう。

 では、今回のロシア大統領令416号により、日本向けLNG供給契約は今後どうなるのでしょうか?

 繰り返します。①日本企業が引き続きS-2に権益参加するかどうか、②今後新設されるロシア法人が対日LNG輸出契約を遵守するかどうか、この2つの問題に直接の相関関係はありません。

 サハリンに設立される新ロシア法人が対日LNG供給契約を遵守するかどうかは、あくまでも日本側LNG輸入者と新ロシア法人の交渉次第になります。

 通常はサハリン・エナジー社の契約はそのまま新会社に移管されることになりますが、今回は大統領令自体が法律に違反しているので、この既契約がスムーズに移管されるのかどうかは未知数と言えましょう。

 大統領が自国の法律を自ら反故にするような国に、海外の投資家・企業家は投資するでしょうか?

 ロシアの国益を標榜する大統領自らが、結果として、ロシアの国益を毀損しているのが実態です。

 プロイセンの鉄血宰相ビスマルク曰く、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」。

 賢明なるロシア国民の健全なる歴史観が期待されるところです。