2022年ロシア国家予算案概観と国民福祉基金資産残高

 2021年の露国家予算案想定油価(ウラル原油)はバレル$45.3でしたが、実績は$69.0になりました。

 2022年の国家予算案想定油価はバレル$62.2です。今年7月度のウラル原油平均油価は$78.41、今年1~7月度の平均油価は$83.27になりました。

 実際の油価が予算案想定油価よりも高い場合、増収分の輸出関税収入は「露国民福祉基金」に積み立てられることになっています。

 同基金の別名は「次世代基金」であり、主要使途は次世代用基金と年金補填、赤字予算の場合の補填です。

 ゆえに2021年の露国民福祉基金資産残高は大幅増加となり、また今年に入っても国民福祉基金資産残高は増大するはずでしたが、昨年9月以降、資産残高は減少しています。

 2021年9月1日現在の資産残高は過去最高の14.02兆R(ルーブル)、今年2月1日現在12.94兆R、7月1日現在10.77兆Rまで減少。

 増えるはずの資産残高が急減していることは、この分がロシア軍によるウクライナ侵攻用軍事費に転用されていることが透けて見えてきます。

 その傍証として、プーチン大統領は2022年3月中旬、ロシア政府に対して国民福祉基金を「優先順位の高い目的」への使用許可を示達して、翌4月にその旨の新政令が採択されました。

ロシアから欧州向け天然ガス供給路

 ロシアから欧州顧客向け天然ガス主要輸送路は以下5系統あります(bcm=10億立米)。

陸上経路3系統:

①ベラルーシ~ポーランド経由ドイツ(旧東独)(公称年間輸送能力33bcm)

②ウクライナ~チェコスロバキア経由ドイツ(旧西独)とオーストリア(116bcm)

③ウクライナ~ルーマニア~ブルガリア~ギリシャ経由トルコ(26bcm)

(上記以外に、露からフィンランド向け天然ガスP/L 6bcmあり)

海底P/L2系統:

④黒海経由トルコ:ブルーストリーム(16bcm)+トルコストリ―ム(31.5bcm)

⑤バルト海経由ドイツ:ノルト・ストリーム① (NS①/55bcm)+ノルト・ストリーム②(NS②/55bcm)

 上記の公称輸送能力は④⑤の海底P/L以外、あくまで公称にすぎません。

 特にウクライナ~チェコ・スロバキア経由欧州向け天然ガスP/Lは1970年代に建設された古いP/Lであり、年間実働稼働能力は70~80bcm程度とも言われております。

 トランジット国はP/Lトランジット料金を徴収する条件として、P/Lの保守点検・定期修理などの管理を求められています。

 ウクライナ側はEUに対し、このトランジット輸送量を現行契約の40bcm以外、さらに55bcm増量を求めました。

 この55bcmとはノルト・ストリーム②の年間輸送能力(27.5bcm×2本)と同じです。

 すなわち、NS②を使わないで、ウクライナ経由天然ガスを輸入してほしいとEUに要求したわけです。

(地図出所:米EIA)