仏教系団体が献納した戦闘機は計51機

 国内では宗門トップが積極的に権力や皇室にすり寄り始めます。仏教にとって最も大事な依りどころである聖典も、「皇道仏教」の理屈に沿って改編されます。「日本仏教は天皇あってこそである」「天皇は阿弥陀仏である」などと仏教教義の曲解がなされます。テロリストとなる僧侶も出現し、平然と「一殺多生(1人の悪人を犠牲にして、多数の者を救い生かすという考え)」などと唱え始めたのです。

――その後は戦闘機の献納、軍艦建造費の寄付などまで行き着きます。

鵜飼氏:その前段階に触れると、戦時下における金属供出に、地域の寺院は積極的に協力してきました。兵器の献納は金属供出の延長線上と捉えていたのでしょう。仏教系団体が献納した戦闘機は判明しているだけでも陸軍に30機、海軍に21機の計51機です。

戦時下の金属供出で寺院から集められた梵鐘や仏具(写真提供:四天王寺)

 例えば曹洞宗では「曹洞一号、二号」、浄土宗は「明照(天皇から下賜された法然上人の大師号)号」、臨済宗は「花園妙心寺号」、四天王寺は「四天王毘沙門天号」、初詣で賑わう成田山新勝寺では「新勝号」などと機体に銘打って献納します。

 真宗大谷派では、軍艦建造のための多額の資金を海軍に差し出し、また、宗門の子弟に対し、戦闘機パイロットの養成まで実施しています。実際に練習機2機を購入しています。

浄土宗が献納した戦闘機「吉水号」

 ただ、お断りしておかねばならないのは、戦闘機の献納をしたのは仏教界だけではないということ。キリスト教団や新宗教も積極的に献納しています。