安倍氏の国葬で最も得をするのは統一教会

 山上容疑者が安倍氏を襲う決意をしたというのは、昨年の9月、統一教会の創始者である文鮮明の妻で、現在の教団の主宰者である韓鶴子が、やはり総裁の地位にあるNGO「天宙平和連合(UPF)」に送った安倍氏のビデオメッセージを見たことだった。

「韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します」

 安倍氏はそう明言している。どうしてそのようなメッセージを送ったのか、いまとなっては本人に聞くことも叶わないが、“元首相”というだけでも、これは明らかに「権威の原理」を発揮している。「安倍さんがそう言うのだから安心だ」という人だっているはずだ。

 そしていま、安倍氏の国葬が決まった。私が統一教会の会員であれば、山上容疑者も見たとされる安倍氏のビデオメッセージを見せてから、こう言って勧誘する。

「日本の国葬になった人も教祖様に敬意を表しているのよ」

「だから家や土地を売ってでもお金を寄付しましょうね」

 安倍氏の国葬でもっとも得をするのは統一教会のはずだ。なぜ、こんな単純なことに頭がまわらないのか。

 今回の事件を発端に、あらためて統一教会の反社会性を指摘し、政治家それも自民党との関係を指弾する世論が溢れた。

 統一教会の会員であることを知らずに、選挙活動にボランティアとして協力してくれたことを言い訳する政治家もいる。だが、それも「返報性の原理」からすると「貸し」をつくったことになり、いつか統一教会に政治力で「貸し」を返すとも限らない。だから、現実に被害者を出している「反社会的な団体」とは距離をおく必要がある。

 岸田文雄首相が主導したとされる国葬の判断は拙速に過ぎる。むしろ個人的感情が先走ったようにも見える。こんなことでは、台湾有事ともなった場合に、首相として冷静な判断ができるのか、心許ない。

 安倍氏の国葬を行うのであれば、まずは政府与党である自民党が統一教会との関係について総括すべきだ。

 国費すなわち国民の税金を使って、国を挙げて執り行われる国葬。それがカルトのマインドコントロールに利用されるなど、こんなに愚かで、ふざけたことはない。