こうしたことは、スーパーマーケットの例に限らず、一般のビジネスでも広く反映されていて、いわゆる悪徳商法はまさにこのテクニックを悪用して、いつの間にか騙される。

 こうして人間の心理を巧みに利用した挙げ句、カルトと呼ばれる組織が最後に大きく異なるのは、「恐怖説得」を仕掛けてくることだ。「せっかくグル(宗教的指導者)に会えたのに」「こんなに大事な教えを知ったのに」という、いかにも慮る言葉から「ここで辞めたら地獄に堕ちる」「○○さんはここで辞めて事故にあった」などと脅して、抜け出せなくする。そうやって脅迫の構造を作り上げ、支配と服従の関係に持ち込む。

強烈な威力を発揮する「権威の原理」

 そんな自分でも気付かないうちに絡め取られてしまうマインドコントロールのテクニックだが、そこにもうひとつ、どうしても忘れてはならないものがある。「権威の原理」だ。

 原理研究会に関して指摘されてきたのは、大学の側にも問題があったことだ。同じ大学の教職員にもシンパがいて、あの教授がこう言っている、偉い先生が推薦している、と宣伝されると、学生も信じてしまう。つまり、「権威付け」が影響する。

 オウム真理教では、教祖の麻原彰晃がダライ・ラマに面会したことから、教団を信じ、入信した信者も少なくなかった。いまも後継団体はそのことを利用しているという。

 有名芸能人が悪徳商法の広告塔となったことを責められるのは、品行方正だったり清潔だったりするイメージがある種の「権威」となって、被害者を信用させるからだ。