スタジアムのスタンドには悲嘆にくれる家族の姿

 その話を裏づけるような光景を見た。

 スタンドには花婿、花嫁の家族の姿があったが、母親たちは我が子の姿を探し、そして「アイゴー!」と何度も叫び泣き崩れていた。怒りを噛み殺すように頬の筋肉を痙攣させている父親もいた。式が終了し、場外で家族の話を聞いた。

 一人の母親は一言しゃべるたびに「アイゴー」の言葉を挟み込んだ。

「娘は言葉も通じない外国人と海外でどうやって生きて行くのか……、アイゴー!」

 別の家族は、

「息子をムンに浚われた。かどわかされた。もう息子は手の届かない遠い世界に行ってしまった」

 と嘆いた。

 マンセー! アイゴー! 広いスタジアムの中で歓喜と悲哀が奇妙な潮目を作りだしていた。

 恐ろしいマインドコントロール、霊感商法、家族崩壊……それらを伴う宗教団体を世の中では“カルト教団”と呼ぶ。現在は「世界平和統一家庭連合」と名称を変えた統一教会。その本質も変わったのだろうか。