結婚相手を教祖が選ぶという異様さ、何万人という人間が一堂に会して見ず知らずの相手と結婚式を挙げるという驚き。とても普通の人間には理解できないことだった。
私はその合同結婚式を取材するためにソウルに向かった。ソウル郊外にあるオリンピック総合スタジアムの入り口で受付を終え、暗い廊下を歩いてスタジアムに足を踏み入れた時の、あっと息を呑んだ瞬間の事は今でも忘れられない。
巨大スタジアムを埋め尽くしたウエディングドレス姿の花嫁たち
巨大なスタジアムが純白のウエデイングドレスで埋まっていたのだ。この日の為に世界中から3万625組のカップルが集まったという。
その光景は不気味としか言いようがなかった。その中にどこか晴れ晴れとした風の桜田淳子や山崎浩子の姿もあった。
やがて教祖、文鮮明と妻の韓鶴子が冠を頭に乗せ、クリーム色に金筋のガウンをまとって姿を現した。すると3万625組の男女が一斉に「ムーン・ソンミュン、ハン・ハクチャ、マンセー(万歳)!」と連呼する声がスタジアムに響き渡った。