習近平国家主席(写真:AP/アフロ)

(譚 璐美:作家)

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は6月16日、「グローバル・トレンド・レポート2021」を発表し、戦争や暴力、迫害、人権侵害によって自宅を追われ、国内外へ避難した人は世界で1億人を超えたと報告した。これは地球上の全人口の78人に1人が避難した計算になる。難民の3分の2以上は、シリア(680万人)、ベネズエラ(460万人)、アフガニスタン(270万人)、南スーダン(240万人)、ミャンマー(120万人)の5カ国の出身者が占めた。

 ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する今、ウクライナではすでに700万人以上が国内で避難し、600万人以上が海外で難民になっていることから、難民の増加傾向は今後も続くことは明らかだ。

 その一方、中国でも憂慮される事態が起きている。

年々増加する中国人による難民申請

 UNHCRが同日公表した統計によれば、2021年に難民申請した中国人は12万人近くにのぼり、前年比で10パーセント増加した。2020年も2019年より3.7パーセント増加し、ここ数年で中国人の難民申請数が急増している。この3年間は、中国政府がゼロコロナ政策を実施し、厳しい出国制限を課しているにも関わらず、あの手この手で海外へ脱出して政治的庇護を求める中国人が急増しているのである。

 英国の『エコノミスト』(電子版、2021年7月28日付)が伝えたところによると、UNHCRの統計にみられる顕著な傾向として、習近平体制に入った2012年以降、難民申請者数が急増した。それ以前の胡錦涛政権の時代には、毎年平均で1万5000人~2万人未満で推移していたが、2012年(1万5362人)を境として毎年増加し、2020年には10万7864人に達し、2012年からの8年間に合計61万3000人が難民申請したという。

 そうした人々の多くはビジネス用ビザや観光ビザを取得して海外へ渡航後、そのまま所在国で政治避難を求めたことが記録されている。