連載:少子化ニッポンに必要な本物の「性」の知識

港崎遊郭・四大大楼の一つ「神風楼」。看板に記された「NECTARINE」とはバラ科の果実を意味する。この異人揚屋は西洋人からはNo9の愛称で親しまれ、横浜港開港から関東大震災までの40年の間、繁栄を見せた大店(おおだな)である

 娼婦は春を鬻ぐなりわいの女性だが、商取引とは双方的なものである。

 かつて多くの女性が主張したように、「女性たちは純潔である」としたならば、この世に不潔な男性など、一人もいないだろう。

 もし、淫を買う男性が一人もいなければ、淫を売る娼婦も存在しないのだから。

羅紗緬とは何か

 羅紗緬(らしゃめん)は、幕末から明治にかけて、日本在住の西洋人を相手に取っていた洋妾(ようしょう)、もしくは日本での外国人の現地妻となった日本人女性のことを指す。

 慶應4年(1868)の「中外新聞」には「外国人の妾を俗にラシャメンと称す」とある。

 羅紗緬(羅紗綿とも書く)とは、もともと綿羊のことを指す。

 西洋の船乗りが食料としての目的と、性欲の解消のため、性交の敵娼(あいかた)として羊を船に載せていたことが羅紗緬の呼び方の由来とされる。

 それが転じて、外国人を相手にする娼婦や妾を当時の人は綿羊娘と揶揄した。

 洋妾は長崎にはすでに存在していた。

 喜田革守貞の『守貞漫稿(嘉永6年:1853)』によると「国人誤て洋夷は犬及び綿羊を犯すと思ひ、その犬羊と同じく処女の夷妾となるを卑しめ、雑夫仮名を付けて羅紗めんと云ひ初しが遂に通称の如くなる」とある。

 横浜開港以前に羅紗緬という呼び方が定着したようだ。