核兵器禁止条約に参加できない被爆国日本

 一方、核兵器禁止条約(Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons)は、2017年7月に国連総会で採択され、2021年1月に発行した。名前が紛らわしいが、核廃絶条約はNPTとは全く別の条約である。

 この条約は、NPTのようなダブル・スタンダードを取らず、将来の核廃絶を見通して、核兵器の所有自体を違法とする条約である。署名・批准国は、2022年6月現在でアジアやアフリカ、中南米諸国を中心に60か国を超えている。

 しかしながら、米露中英仏、インド、パキスタンといった核保有国は参画していない。また、米国の核の傘に入っている北大西洋条約機構(NATO)諸国や日本、韓国も同様に参画していない。

 岸田首相は、核保有国が参画していない同条約に参画する意義は少ないとしている。日本は米国の核の傘の下にあると考えられているからだ。

 米国は、核兵器の先制使用を否定していない。これは、日本領土に侵攻すれば、米国の核兵器の先制使用のターゲットになりうることを意味している。この点が、日本領土の平和と安全に資すると考えられている。

 そのため、米国政府への配慮から核兵器禁止条約への署名・批准はおろか、オブザーバー参加すら否定している。だが、NATO加盟国で米国の核の傘にあるドイツはオブザーバー参加する。

 日本のオブザーバー参加によって、米国など核保有国の意向を結果的につなぐこともできるであろう(現時点では、米国政府は日本政府のオブザーバー参加は決して望まないであろうが)。

 被爆者など民間人だけでなく、被爆国の政府としても原爆の非人道性を現場の実態を踏まえた資料を基に訴えていくことは、核兵器使用の現実的可能性が高まる中では特に重要だ。

 実際に、締約国会議の前にウィーンで開催された「核兵器の人道的影響に関する会議」には、外務省の担当課長が出席している。人道的影響に限ってのオブザーバー参加であれば可能なのではないか。

『「核なき世界」の実現は、最も重要なライフワークの一つ』(岸田文雄著『核兵器のない世界へ』)というのであれば、人道的影響に限定した形で締約国会議へのオブザーバー参加はすべきであったであろう(残念ながら、2022年6月開催の締約国会議についてはオブザーバーとしても不参加を決定している)。