サンクトペテルブルク国際経済フォーラムで講演するプーチン大統領(サンクトペテルブルク国際経済フォーラム)

(岩田 太郎:在米ジャーナリスト)

 ロシアのプーチン大統領の「対露経済制裁失敗論」が、ますますヒートアップしている。

 自身の故郷で6月15日から開催されていたサンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF)で17日に演説したプーチン氏は、「米国とその同盟国が(ロシアのウクライナ侵攻に対して)科した前例のない制裁は狂気であり、無分別で、当初から失敗が運命づけられていた」と断じた上で、次のように主張した。

「われわれが金融市場・銀行システム・貿易システムを安定させたため、制裁の効果はなかった」
「ロシア経済を砕こうとする目的は成功しなかった。彼らは明らかに失敗した」
「ロシアは強くてモダンな国家として新時代を迎える」
「ロシアは乗り切れるが、欧州は自らの制裁の結果、今年4000億ドル(約54兆円)の損失を被る」

 一方、「チーム・プーチン」のメンバーたちも意気軒昂だ。ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は6月15日、「中国はロシアからのエネルギー供給が自国に必要なことを理解しており、自ら自分の足を撃つことはしない。だが、西側諸国は自分の頭を自分で撃っている」と嘲笑した。

 マクシム・レシェトニコフ経済発展相も同日、「ロシアのインフレは明らかに予想よりも低水準になる。今年の景気後退は従来想定されていたよりも深刻ではない可能性がある」と指摘している。

 事実、ロシアは過去数年間、ウクライナ戦争に向けてゴールドや準備金を積み上げ、対外負債の返済を急ぎ、外国資本への依存を減らす一方、国産品の生産を増強する輸入代替政策を実施してきた。こうした備えが、制裁ショックを弱めているのは確かだ。

 さらに、アントン・シルアノフ財務相は6月16日、「ロシア国産品の需要を増やすため、連邦公務員が公用で移動する際には、国営自動車メーカーであるアフトワズが生産する国産車ラーダに乗るべきだ」と踏み込んだ。

 チーム・プーチンが熱烈に愛国的・翼賛的で勇ましい言説を唱える一方で、一部の実務家肌のロシア高官やビジネスマンは、冷めた見方を披露しており、注目される。