英仏独からも誘導弾が撃てる大砲が前線に届き始めた
ルース氏はこの後、6人の男をバンに乗せて2つの基地を回るという。待ち合わせ場所は近くのカフェだ。
「同行していいか」と尋ねると「話をするのはいいけど、写真は絶対にダメだよ。みんなの命と安全がかかっているからな。それよりお前も行ってみないか」と誘われた。「いや年を取りすぎているのでとても無理だ」と断ると「まだまだ行けるぞ」とからかわれた。
内心、大変なことになってきたなと思った。56歳のルース氏自身、最初は前線で戦うつもりで2カ月半前にウクライナにやって来た。しかし軍は未経験で年齢を理由に断られ、キーウでリクルートを始めた。ズブの素人で60歳の筆者にはもともと無理な話だ。カフェには屈強な男たちが待っていた。最終的に米国、英国、ドイツ、スイスからの4人が集まった。
ルース氏はカフェの外で5~6人のグループとも話し込んでいた。ウクライナで捕虜になった英国人2人とモロッコ人1人がロシアの「代理法廷」で「雇い兵」であることを理由に死刑宣告を受けたことを心配しているのか、英国人男性はほとんど口を開かなかった。「軍事オタク」というドイツ人男性はハルキウの戦闘地域での支援活動について語り始めた。
「ロシア軍の大砲はウクライナ軍の10倍はある。しかし射程40キロメートルのGPS(全地球測位システム)誘導弾も発射できる米国製『M777』155ミリメートル榴弾砲だけでなく、英国やフランス、ドイツからも誘導弾が撃てる大砲が前線に届き始めた。ドイツのPzH2000自走榴弾砲は位置を変えながら砲弾を連射できるから大いに期待できる」と胸を張った。