そこで、王毅外相は上述のどのタイプに属するだろうと考えてみると、明らかに典型的な第三のタイプなのである。しかも数カ月後に、「最後の出世の関門」が待ち受けているのだ。

 通常の民主国家では、「外交トップ」と言えば外相だが、中国では、王毅外相は「外交2番手」である。では、誰が「外交トップ」かと言えば、楊潔篪(よう・けっち)前外相だ。現在の肩書きは、中国共産党中央委員会政治局委員兼中国共産党中央委員会外事工作委員会弁公室主任。

 とても長い肩書きだが、要は「共産党の外交トップ」である。「党が政府を指導する」中国においては、「政府の外交トップ」は2番手にすぎず、「党の外交トップ」こそが、習近平総書記と直接やりとりをする「真の外交トップ」なのだ。

 王毅外相からすれば、まるで「目の上のタンコブ」のような楊潔篪主任は、現在72歳で、次の共産党大会をもって引退することが確実視されている。その第20回共産党大会が開かれるのは、「今年後半」(日程は未発表)。

 というわけで、王毅外相としては、「真の外交トップ」に就けるかどうか、いままさに「勝負の数カ月」なのである。決めるのは事実上、共産党総書記の「3選」を目指す習近平氏ただ一人だ(習総書記が「3選」されるという前提での話だが)。

誰よりも習近平に忠実な男

 2013年3月に王毅氏が外相に就いて以降、私はほぼすべての公式発言をフォローしてきたが、王毅外相ほど習近平総書記に平身低頭している幹部は見当たらない。常に習総書記の「目」となり「耳」となり「口」となって行動してきた。「上司に仕える」という意味では、まさに「官僚の鑑」だ。