東京の南の玄関口、品川の存在感がますます高まりそう(写真:ロイター/アフロ)

(山下 和之:住宅ジャーナリスト)

 2022年4月、国土交通省が東京メトロ有楽町線と南北線延伸に関する事業許可を出した。2030年代半ばまでの開業を目指している。有楽町線に関しては、ふたつの新駅開業が予定されており、周辺への注目度が高まりそうだ。首都圏各線の新線・新駅情報と併せて、今後不動産など資産価値が高まりそうなエリアを紹介しよう。

ますます高まる「品川駅」の存在感

 南北線の延伸は、白金高輪駅から品川駅間。約2.5kmの延伸で、現在の京急・JR品川駅に接続する。残念ながらその間に新駅の計画はないのだが、品川駅はリニア中央新幹線の開業も控えており、東京の南の玄関口としてますますその存在感が高まりそうだ。周辺のマンションの資産価値の上昇も期待できる。

 品川駅周辺にはあまり開発余地は残されていないが、お隣の高輪ゲートウェイ駅では駅前を中心に大規模な再開発が進められており、今後も大型の超高層マンションなどが登場することになるだろう。立地的に「億ション」が中心のエリアになるため、高額所得者層は注目しておいていいだろう。

 新駅の予定はないものの、東京メトロの試算によると、品川駅とつながることによって、南北線の混雑率は「目黒─白金台」間で17ポイント改善し、銀座線は「新橋─虎ノ門」間で17ポイント改善するとみられている。新橋駅で銀座線に乗り換えて虎ノ門方面に向かっていた乗客が、南北線の延伸よって南北線を利用するようになれば、混雑が緩和される。南北線と接続する東急目黒線方面の価格にも影響を与えるかもしれない。

「有楽町線」の新駅開業で再開発期待のエリア

 もうひとつの東京メトロ有楽町線の延伸は、豊洲駅から半蔵門線の住吉駅間の4.8km。有楽町線は新木場駅が始発で、豊洲駅はその2駅手前だが、豊洲で分岐して北東に向かい、東京メトロ東西線の東陽町駅を通って、さらに北上、半蔵門線の住吉駅に接続する。その先、半蔵門線に乗り入れて錦糸町駅、押上駅につながることになるのではないだろうか。

 その延伸計画にともない、豊洲駅と東陽町駅の間の「江東区枝川二丁目付近」と、東陽町と住吉の間の「千石二丁目付近」に新駅が設置されることになっている。

 枝川二丁目付近は、マンションやアパートなどと倉庫や町工場が混雑するエリアだが、空き地や駐車場なども多く、新駅開業が確定したことで、今後はそれらを中心に再開発が進み、マンションの供給が期待できる。

東京メトロ南北線と有楽町線の延伸区間(出典:東京メトロホームページより)

「東西線」の混雑率が緩和されて人気が高まる?

 千石二丁目は、四ツ目通り沿いに広がる住宅地だが、少し南には江東区役所があり、商業施設が充実しており、北の住吉駅の手前の小名木川沿いにも大型商業施設が立地している。千石二丁目はちょうどその中間点で、どちらの駅も若干遠いものの、新駅が開業すれば、交通アクセスが大幅に改善され、注目度が高まるのは間違いない。

 同時に、混雑度が高いことで知られる東京メトロ東西線の混雑率緩和が期待される。現在、東西線を利用している人の中には、東京メトロ有楽町線や半蔵門線を利用するようになる人が増え、東京メトロの試算によると、東西線の木場駅・門前仲町駅間の混雑率が20%ほど緩和される。

 それだけに東西線の東陽町駅より東側の各駅の人気が高まり、マンションなどの価格の上昇が期待できるかもしれない。