いまや珍しくなくなったタワーマンション群(写真は神奈川県川崎市の武蔵小杉エリア)

(山下 和之:住宅ジャーナリスト)

 2000年代初頭までは希少性が高く、それゆえ購入後の資産価値の上昇が期待できた超高層マンション(タワーマンション)。最近では分譲戸数が増加し、希少性が薄れたこともあって、「超高層」というだけは簡単には売れず、資産価値の向上も期待しにくくなっている。そんななかでも資産価値の向上が期待できる超高層マンションの条件とは──。

超高層マンションの希少性は低下している

 超高層マンションというのは、一般的に20階建て以上のマンションを指すが、わが国では1990年代の後半から急速に増加した。それまでは首都圏における超高層の分譲マンションの年間竣工戸数は2000戸台止まりだったのが、2000年には5000戸を超え、ピーク時の2007年には2万戸近くに達した。

 その後、リーマンショックもあって減少したものの、最近でも年間5000戸台から8000戸台の竣工が続いている。

 民間調査機関の不動産経済研究所によると、2022年以降も年間8000戸台から1万4000戸台の完成が続き、超高層マンションはますます増加していく見込みだ(【グラフ1】参照)。それだけに、タワマンというだけでは他の物件との差別化ができず、資産価値の向上も期待しにくくなっている。超高層ということのほかにも、プラスアルファの魅力がないと評価されにくい時代になっているのだ。


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「超高層」というだけで売れた時代もあった

【グラフ2】は首都圏の分譲マンションの発売戸数を、19階建て以下の一般の中高層マンションと、20階建て以上の超高層マンションに分けてグラフ化したものだ。


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 直近1年間の超高層マンションのシェアを算出してみると、2021年12月のように6.6%と1割を切る月もあるが、反対に2021年9月には23.4%と4戸に1戸近くに達している。平均でも年間の分譲戸数3万5298戸中の4780戸で、そのシェアは13.5%に達する。ザックリといえば、首都圏で分譲されるマンションのうち7.4戸に1戸は超高層マンションであり、当たり前とまではいわないまでも、決して珍しい存在ではなくなっている。

 2010年代の半ばまでは超高層マンションというだけで、発売月に契約が成立する月間契約率は極めて高かった。全体の月間契約率が70%を切る月でも超高層マンションは80%台、90%台の高い契約率であり、極めて高い人気を誇った。超高層というだけで売れる、たいへん恵まれた時代だった。