(山下和之:住宅ジャーナリスト)
東京23区の新築マンションの平均価格が1億円台に達する月もあるほど増えてきた億ション。都心部などでは1億円以上は当たり前で、それだけでは高級マンションといえない時代になりつつある。ほんとうの意味でハイグレードマンションといえるのは2億円以上で、“2億ション”という声まで聞かれるようになってきた。
史上最高価格のマンションとは?
これまでに発売されたわが国の分譲マンションのなかで、一番高かったのはいくらかご存じだろうか。
分譲マンションのなかでも、わが国最高峰といわれるのが三井不動産レジデンシャルの「パークマンション」シリーズ。都心の超希少な立地で、これ以上ないという贅を尽くした建物に、パーフェクトなサービス提供するマンションにのみ許されるブランドだ。
そのうち2017年竣工の、『パークマンション檜町公園』(東京都港区六本木4丁目)は、常にコンシェルジュ2名、ドアマン2名、ポーター1名が出迎えてくれる、超高層ホテル並みかそれ以上のおもてなしのバトラーサービスで知られ、最上階のプレミアム住戸は専有面積500m2台で、55億円だったといわれる。
あえて「いわれる」としたのは、実はこのマンション、分譲時には各種の広告を行っておらず、三井不動産グループの会員サロンなどを通じて販売され、価格は公表されていないからであり、業界内ではこれが、わが国のマンションの最高価格だろうとされているのだ。
23区のマンション価格は平均1億円超の月も
ここまで極端な例でなくても、わが国のマンション市場、特に首都圏ではいまや分譲価格が1億円の億ションは当たり前の存在になりつつある。
グラフ1は、東京23区の最近の分譲マンションの発売戸数と平均価格を示しているが、何と2021年4月と8月には、平均価格が1億円を超えているのだ。
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4月をみると、平均価格は1億180万円だったが、それでも月間契約率は76.6%に達した。発売月に4戸中3戸以上の契約が成立し、首都圏全体の契約率73.6%を上回った。
また8月の東京23区の平均価格は1億812万円で、契約率は72.5%だった。首都圏平均の73.0%よりやや低いものの、好不調のボーダーラインといわれる70%を上回ったのは変わらない。
都心やその近くではいまや億ションは決して珍しい存在ではなく、当たり前のように売り出され、売れているのだ。