「この戦争は和平では終わらない」

「この戦争は和平では終わらない。2014年にクリミアが併合され、東部で紛争が起きた後もウクライナは中立国でした。にもかかわらずロシア軍が侵攻してきて何の罪もないウクライナ人を虐殺し続けているのです。ブチャで彼らが何をしていたのか白日のもとにさらされました。一時的な停戦はロシア軍に部隊再編の時間を与えるだけです」

「何が何でも、この戦争に勝たなければならない」と言うシュマトクさんは、中立の立場からロシアに気遣う赤十字国際委員会や、安全保障理事会の常任理事国として拒否権を持つロシアの非道を止められない国連に失望している。だから世界中から寄せられる善意のお金を直接ウクライナに届けようと知り合いのブチャ市長に声を掛けた。

 キーウ経済大学の調査では、この戦争でウクライナのインフラに生じた直接的な損害は5月2日時点で約920億ドルに達している。ロシア軍による侵攻以来、経済損失の総額は国内総生産(GDP)の減少、投資停止、労働力流出、追加の国防費、社会支援費などを含めて5640億~6000億ドル以上と推定される。

 少なくとも195の工場や企業、231の医療機関、543の幼稚園、940の教育機関、295の橋と橋桁、151の倉庫のインフラが損傷・破壊されたり、ロシア軍に占拠されたりしている。97以上の宗教的建造物、144の文化的建造物が損傷・破壊された。2万3800キロメートルの道路と3370万平方メートルの住宅が損壊・破壊・占拠のため使えなくなった。