「トゥキディデスの罠」の5つのフェーズ

「NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長がこの戦争は何年も長引く恐れがあることに同意した。私たちは本当にそうなることを認めているのか。イギリスの国防予算はGDPの2%に制限され、ステルス戦闘機F35、戦車、装甲戦闘車、艦艇、兵員1万人が削減される。私たちは目の前の現実から逃避している」とエルウッド氏は語気を強めた。

「私たちは第二次大戦が勃発する前の年にいるという軍事的、政治的、精神的な心構えができていない。現在の状況は1938年よりさらに悪い」

 エルウッド氏は「トゥキディデスの罠」を例に挙げて説明した。米政治学者グレアム・アリソン氏が米中を念頭に、歴史的に新旧のパワーが逆転する時、戦争が起きるリスクが増すと指摘した「罠」だ。

 エルウッド氏によると、中国は軍事的、経済的、技術的なアメリカの世界支配に挑戦している。「トゥキディデスの罠」は5つのフェーズに分かれる。まず、新しく台頭した勢力が現在の支配勢力と争い、追い越すというプロセスだ。米中間では1990年代から始まり、21世紀は中国の時代になりつつある。

 第2段階では、古い大国がこれに対抗する戦略をまだ確立しておらず、新しい大国の行動を批判し始める混乱の時代。周りの国はどちらにつくか迫られる。ドナルド・トランプ前米大統領には戦略がなかった。第3段階ではより敵対的で攻撃的な行動が始まり、第4段階で新大国が旧大国に直接または代理勢力を使って挑む嵐の時代に突入する。

 最後の第5段階では勝利者の書いた条約により新秩序が確定される。ウクライナは第3段階の始まりという。

「多くの人がウクライナは中国と何の関係があるのかと尋ねるかもしれないが、私はすべてだと答える。プーチン氏は中国の支持がなければ冒険主義に走ることはなかった。物事の行く末を議論するため北京冬季五輪に参加したのだ」