「軍事力の有用性を検討する勇気を」
エルウッド氏はまずこう切り出した。
「欧州は再び戦争で荒廃している。私たちの生き方を守るために軍事力の有用性を検討する勇気を呼び起こさなければならない。ウクライナ戦争は世界の安全保障がいかに急速に悪化するかを示す警鐘である。と同時に、自己満足に浸り、自分たちの価値を守るための投資を怠るとどうなるかという警告でもある」
エルウッド氏は昨年11月、ロシアの戦闘部隊がウクライナ国境付近に集結したことに対して、北大西洋条約機構(NATO)の1個師団をウクライナに派遣させるよう要求した。しかし即座に却下された。
「もし派遣されていたら侵略を抑止できていたかもしれない。軍隊をウクライナに派遣しないという決断はいくつかの教訓を与えてくれた」
この時、NATOを統治する政治指導者の多くがいかにリスクを避けるようになっているかをエルウッド氏は痛感した。「核戦争を引き起こしたくない」「第三次大戦を起こしたくない。私たちはそれを望まない」というフレーズを何度聞かされたことか。情勢分析もお粗末だった。ウクライナ戦争の広い影響を評価できなかった、と自戒を込めて振り返る。
「戦争はウクライナだけの問題とみなされていたが、実際には欧州で原油・天然ガス価格が高騰し、イギリスでも食料価格が実に高くなった。私たちの臆病、ためらいをウラジーミル・プーチン露大統領に利用された」