「中露関係は同盟(alliance)ではなく連携(alignment)」

 ロシアは中国にとってサウジアラビアに次ぐ第2の原油供給国で、昨年は総輸入量の16%に当たる日量160万バレルを供給。天然ガスではオーストラリア、トルクメニスタンに次ぐ第3位の166億立方メートル(同10%)を供給した。この2月、露ガスプロムとロスネフチは新しいパイプラインを通じて年間100億立方メートルの天然ガスと日量20万バレルの原油を供給する長期契約を中国側と締結した(米コロンビア大学国際公共政策大学院まとめ)。

 中露両国に詳しい米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院のセルゲイ・ラドチェンコ特別教授は、先に触れた英国保守党の討論会で、こう歴史を振り返った。

「中露の出会いは全くと言っていいほど友好的ではなかった。19世紀に入るとロシアはますます東方に進出し、清は衰退した。1949年に毛沢東と中国共産党が革命に勝利し、中ソは接近した。しかし50年に結ばれた同盟はわずか10年で破棄された。中国がボスのソ連に従うという上下関係があったからだ」

 69年には中ソ間で国境紛争が勃発。この不和が72年のニクソン電撃訪中につながる。アメリカは中国との関係を深める一方で、ソ連とは政治対話を進めた。ラドチェンコ氏は現在の中露関係について「50年代のような同盟(alliance)ではなく連携(alignment)だ。つまりロシアがウクライナでやっていることは必ずしも中国の賛同を得られるとは限らないということだ。中国はデスカレーションをよびかけ、ある種の調停者になろうとしている」と語る。

「『殺鶏嚇猴』という中国の諺がある。猿を怖がらせるために鶏を殺すという意味だ。西側がロシアに制裁を加える場合、ロシアは猿を脅すための鶏で、中国が猿だ。ロシアに起きたことを目の当たりにして北京はどう思うだろう。ロシア経済は完全にメルトダウンしている」(ラドチェンコ氏)

 ロシア軍が作戦を転換したのは態勢の立て直しが不可欠になったことが大きいが、習氏が最大の理解者のプーチン氏を失うのを恐れて停戦を勧めたとみても間違いないだろう。