中露「限界なき戦略的パートナーシップ」

 ウクライナ侵攻前の2月4日、プーチン氏は北京冬季五輪の開会式出席に合わせて習氏と会談、同盟とまでは行かないものの“不可侵条約”とも言える中露共同声明を発表した。「すべての核兵器国は冷戦思考を放棄して海外配備の核兵器を撤回、ミサイル防衛システムの無制限の開発を排除する」「特定の国家、軍事的・政治的同盟と連合が地政学的対立を激化している。NATOのさらなる拡大に反対する」と限界なき戦略的パートナーシップを宣言した。

 プーチン氏は2日間の軍事作戦でゼレンスキー氏の首を親露派の傀儡政権にすげ替え、長期的で法的拘束力のある欧州の安全保障を構築する構想を習氏に内々で伝えていたはずだ。しかしプーチン氏の思惑は外れ、戦闘は泥沼化した。このまま無差別の砲撃や爆撃が続けば、ウクライナの都市は露チェチェン共和国のグロズヌイやシリアのアレッポのように瓦礫と化す。中国も共犯にされるのを恐れて、即時停戦に動かざるを得なくなってきた。

 ボリス・ジョンソン英首相は3月19日、英紙サンデー・タイムズ(電子版)に「時間が経つにつれ、ロシアの残虐行為が増えるにつれ、プーチン氏の侵略を容認することは確実に難しくなる。このまま見過ごせると思っていた人たち、塀の上に座っていられると思っていた人々は今、相当なジレンマを抱えている。北京では考え直す人が出始めたようだ」との見方を示している。

 秦剛・駐米中国大使は20日、米CBSのインタビューに「中国は戦争に反対し、即時停戦を求めている。ロシアに軍事援助を行うという偽情報があるが、それを否定する。中露は何年もかけて築かれたユニークな信頼関係にある」と述べた。

 ロシアを批判する側には回らないが、表立って軍事援助を行うわけにもいかない――中国のそうした態度表明に、ロシアも軍事作戦計画を見直さざるを得なくなってきた模様だ。

 予想を上回る損害を出しているロシア軍参謀本部は25日「作戦の第一段階の主要任務」を終了したと取り繕い、キエフ包囲を諦め、東部ドネツク、ルガンスク州の占領に集中する作戦に切り替えると表明した。

 ウクライナの激しい抵抗に直面し軍事作戦の停滞が指摘されるロシアが、より限定された目標に切り替えはじめた可能性がある。

3月24日、ウクライナ南東部の都市マリウポリでは、支援物資を求めて廃墟となった町中を歩く地元住民の横を、側面に「Z」の文字をつけた親ロシア派部隊の車両が土煙をあげながら走っていた(写真:ロイター/アフロ)