23年前の在ベオグラード中国大使館「誤爆」の悪夢

 中国共産党機関紙「人民日報」系の「環球時報」(英語版)は「NATO首脳会議はウクライナ危機の火に油を注ぐ」と題して3月24日「23年前の同日、NATOは78日間のユーゴスラビア爆撃を開始し、数千人の市民を殺害した。NATOは今年も同じ日に首脳会議を開き、“平和”の名の下に軍事配備を強化し、さらにウクライナを武器で武装させるのは誠に皮肉であり、偽善である」という中国人アナリストの分析を伝えている。

 1999年5月7日、ベオグラードにある中国大使館が米軍のB2ステルス爆撃機の「誤爆」で中国人3人が死亡、20人以上が負傷した。中国人民は激怒し、北京では直後から大規模な反米デモが起きた。

 米国務長官として米中関係の危機を処理したマデレーン・オルブライト氏は同月23日、がんのため84歳で死去した。当時のクリントン米政権は「事故」と謝罪したものの、中国国内には「故意の誤爆」との疑念が今もくすぶる。

 コソボ紛争に介入したNATO軍は、主権侵害を理由に和平合意後のNATO主体の平和維持軍駐留を拒否するセルビアへの空爆に踏み切った。この時、セルビアと同じスラブ系のロシアとベラルーシは国連安全保障理事会で武力行使の停止を求めたが、賛成3カ国、反対12カ国で退けられた。中国はロシアとともに賛成に回った。

「誤爆」は、陰でセルビアを支援していると疑われていた中国への嫌がらせと直感する人は少なくなかったのが実情だ。

 筆者は「誤爆」の現場を訪れたことがあるが、今回の伏線はこの時始まっていた。99年チェコ、ハンガリー、ポーランドがNATOに加盟。2003年米英がイラク戦争を強行。04年東欧とバルト三国の7カ国がNATOに加盟。09年アルバニアとクロアチアがNATOに加盟。11年米英仏がリビアに軍事介入。12年米CIA(中央情報局)がシリア反体制派に武器供与を開始。17年にモンテネグロ、20年に北マケドニアとNATO加盟が続いた。