しかし、そんなことはお構いなしの文大統領は、22日、閣議での冒頭発言でも再び安保を強調した。

「国政には小さな空白もあり得ない。特に、国家安保、国民経済、国民の安全は、一瞬も隙間があってはなりません。わが政権の任期はあまり残っていませんが、憲法が大統領に与えた国家元首であり行政首班、軍統帥権者としての責務を果たすことを最後の使命と考えます」

 こうして文在寅大統領府は「安保」を理由に、執務室移転に対する予備費の上程を断り、執務室移転のための一切の協力を拒否しているのだ。

政治的打算に基づく執務室移転への反対

 文在寅政権と共に民主党が、ここまで大統領執務室の龍山移転に反対する理由について、知人の韓国人記者は、「高度の政治的計算が隠されている」と分析した。

「尹次期大統領が約束通り5月10日から青瓦台を開放すれば、青瓦台は一気に韓国国民のホットプレイスになることは自明だ。そのうえ、文大統領が約束して守れなかった公約を尹次期大統領は貫いたという評価を得られるだろう。

 すなわち青瓦台の開放は、6月1日に控える地方選挙において、共に民主党にとって絶対的に不利なイッシューとなる。当然、尹次期大統領側も、地方選挙前に青瓦台を開放して支持率を上げようとする狙いがある」