しかし、尹錫悦氏は違った。尹氏は20日、記者会見を開き、光化門の代わりに国防部庁舎がある龍山(ヨンサン)に執務室を移転するという意志を明らかにした。就任前に国防部の移転と執務室の移転を完成し、就任後すぐに龍山で業務を行うということだ。ところで、この構想に対して共に民主党と文在寅大統領府が「安保」を理由に猛烈に反対しているのだ。

今頃になって「安保」強調とは

 共に民主党と大統領府は、大統領執務室が国防部庁舎に移転すれば国防部関係者と関連装備が別の場所に移転する期間中に「安保空白」が生じる、と主張する。さらに国防部の移転などで機会費用まで追加すれば1兆ウォンの経費がかかるという根拠のない見積書まで提示している。共に民主党議員の間からは「尹氏が呪術先生から青瓦台が凶地だから龍山に移住すべきだという勧誘を受け、龍山に執着している」という陰謀論まで飛び出す始末だ。

 なにより、失笑を禁じ得ないのは、文在寅大統領の手のひら返しのような言動だ。

 文大統領は21日、突然NSC(国家安全保障会議)を招集し、「安保」をやたらと強調しはじめた。過去には、北朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)を飛ばしても「休暇文化を定着させる」として休暇に出かけたり、北朝鮮から開城(ケソン)工業団地の事務所を爆破されてもNSCに出席しなかったりしていた文在寅大統領の口から「安保」という言葉が出てきたことに、多くの国民とメディアは強烈な違和感を覚えた。