旧奈良監獄

 罪を犯した者が刑罰を受けるために送られるのが、刑務所という社会とは隔離された場所。そこでは自由を奪われ、拷問に近いことが行われ命も奪われることがある――というのは昔の話だ。

「今の刑務所は昔とは全然違いますよ。受刑者の中には学校の合宿に来ているかのような勘違いする者もいますからね」

 と話すのは関東の某刑務所の刑務官だ。刑務所といえば灰色でボロボロの囚人服を身にまといボロボロの建物の中で過ごしているんだろうという暗いイメージがあるが、現在の刑務所は昔と比べるとまったく違うという。

「現在の囚人服はほとんどの刑務所がユニクロ製の明るいカラーのラフなポロシャツにパンツです。縞模様の囚人服などありません。シャバ(外の社会)の私服とほとんど同じですよ」(前出刑務官)

 刑務所について昔ながらのイメージを抱いたままという人も多いのではないだろうか。そこで、元受刑者と現役刑務官から聞いた当世刑務所事情を紹介してみたい。

懲罰房ではひたすら「座る」のみ

 2001年12月に名古屋刑務所にて、刑務官が行った放水行為により受刑者が死亡するという暴行陵辱事件が発生した。これが日本の刑務所を変える大きな契機となった。事件は人権問題として社会問題となり、刑務所における法改正が行われることになったのだ。2007年に「監獄法」は廃止され、「刑事収容施設法及び被収容者等の処遇に関する法律」と法律自体が変わった。

「今の受刑者は監獄法が廃止されたことを知っています。だから何かにつけて『人権、人権』と言ってきます。監獄法時代は問答無用で殴り飛ばす刑務官もおりましたが、現在、暴力行為は一切禁止。逆らってくる受刑者が増えたことは間違いない。ただ、逆らってきた者は懲罰を受けることになります」(前出刑務官)