簡単な逃げ道はない

 総じて言えば、クリミア半島から北に向かったロシア軍部隊は、ベラルーシやロシアから南下した部隊よりも前進している。だが、その南部でも攻撃の一部は行き詰まっている。

 南西部では、オデッサに至る道路を守る港湾都市ムイコラーイウで身動きが取れなくなっている模様だ。

 ロシアの部隊は都市を攻撃することも海から侵入して占領することも、さらにはこの都市を迂回することもできずにいる。

 そのため、ロシア軍ではよくあることだが、離れたところから市街を砲撃している。市立動物園にはロケットが少なくとも3度着弾した。

 鳥類を集めた区画にはロケット発射装置「スメーチ」から放たれたロケット弾1発の後部が刺さったままだ。スタッフによれば、その攻撃があった日からクジャクの様子がおかしいそうだ。

 動物園の管理者は「あの大バカヤロウが虐殺戦争を始めてから3週間になる。その結果がライオンやトラやヒョウが自由に歩き回る光景だとしたら本当に笑い種だ」と話している。

 だが、ロシア軍の機能不全と、ウクライナの情報戦での大勝利のおかげで、ウクライナの脆弱さが一部見えにくくなった可能性は否定できない。

 包囲され、攻撃され、それでも屈していない都市からいくらか離れたところの弱さは、特にそうだ。

ウクライナ軍の弱点

 ロシア軍はムイコラーイウでは苦しんでいるかもしれないが、その北東約150キロに位置する都市クリビリフにはかなり素早く進軍できている。

 この作戦がうまくいけば、ドニエプル川の重要な渡河点を支配している大きな都市ドニエプロを脅かすことになる。

 もしロシア軍がハリコフを何とか通過して南下してきたら、これら2つのグループでの挟み撃ちが可能になり、東部でロシア系分離主義者と戦っているウクライナ軍が孤立させられる恐れが出てくる。

「統合部隊」の名で知られる東部のウクライナ軍部隊は、正規軍のかなりを占める兵士で構成されていると考えられている。

 フランス軍のティエリー・ビュルカール統合参謀総長は部下に宛てた3月9日付の書簡で、ウクライナは「作戦予備軍が全くない状況で、広がった陣地を維持する困難に直面すると、あっという間に崩れる恐れがある」と指摘している。