岸田文雄首相と公明党の山口那津男代表(2021年11月10日、写真:アフロ)

(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)

 3月15日、自民党と公明党の幹事長、政調会長らが岸田文雄首相に、年金生活者らにコロナ対策の給付金を支給するよう要請した。このニュースを目にしたときは、心底あきれ果てた。私も妻も74歳の年金生活者であるが、2人とも激怒した。

「年金生活者臨時給付金」という名称が考えられているそうだが、理由は4月に引き下げられる年金の減額分の穴埋めということらしい。それをコロナ対策の名目で行うというのだ。対象は住民税非課税世帯を除く年金受給者2600万人である。ここに一律5000円を給付するというのだ。

こんな提案を「しっかり受け止める」必要などない

 年金が下がるというのは、受給者からすれば面白くはない。しかし、この制度が取り入れられたのは、年寄りをいじめるためにではない。現役世代の賃金水準が下がった時に、それに合わせて給付を抑制しないと、将来、若い世代受け取る年金の水準が下がってしまうからだ。6年前の法改正の際、野党は「年金カット法案」と批判した。だが自公の与党は、「将来世代の年金を守るため」などと説明していた。

 この説明に真っ向から反するやり方が、今回の給付金問題である。