尹氏は「過去に監査機関を掌握した民情首席室は合法を装って政敵、政治的反対勢力を統制することが少なくなかった。世評の検証を偽装して裏調査をしてきた、このような残滓を清算する」「私が目指す大統領室は監査機能をなくし、ひたすら国民のために仕事をする有能な政府であり、政策アジェンダを発掘して調整管理をすることだけに努力する」と述べたと報じられている。
韓国の大統領は、強大な権力を握っているため「帝王的大統領」と呼ばれてきた。実は、文在寅氏も5年前に大統領に就任する際、「帝王的大統領」を否定する考えを示していた。ところが実際に政権についてみると、前述のように強引な人事を通し、また議会での数の力によって政権の権力を強化するような法律を次々と成立させてきた。また、記者会見もほとんど行わず、民意を反映させる努力も怠ってきた。結局、文在寅氏は近年では最も「帝王的」な大統領として君臨してきた。
検事総長としてその弊害を目の当たりにしてきた尹氏は、民情首席室を廃止することで、その弊害を清算し、青瓦台の検察統制を断つという意志を示したものである。これは、文政権の報復人事に対する反省のようにもみえるが、民情首席秘書官を通じて行ってきた、強権的政治に対する攻撃であり、その手法に対する捜査のメスが入るかも知れない。
尹氏はその他にも、現在は8人いる青瓦台の首相秘書官を半減させること、青瓦台の定員を30%程度削減することなどを打ち出している。
これらが実現されれば、政治的スタンスだけでなく、職務執行のスタイルも文在寅時代とは大きく変わることになるだろう。
「女性家族部廃止」の方針に共に民主党が反発
一連の政府改革案の中で、一部から大きな反発が出ているのが、「女性家族部」の廃止案である。尹氏はかねてから女性家族部の廃止を主張してきた。女性家族部は、金大中政権時の2001年、「女性部」として発足。2005年に女性家族部に改編されるが、この間、「女性の地位向上」と男女平等を政策の中心に掲げてきた。