3月10日、前日に投票が行われた大統領選挙で勝利し、会見を行う尹錫悦氏(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 3月9日に行われた韓国の大統領選挙で、「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補が韓国の20代大統領に決まった。これで韓国では5年ぶりに保守政権が発足することになったが、得票率ではわずか0.7%差の辛勝であり、共に民主党が掌握する国会との関係構築などを考えると、尹錫悦新政権の先行きは決して明るくない。

 歴代の大統領選挙がそうであるように、今回の大統領選挙も5年間の文在寅政権に対する「国民による審判」という性格が強かった。両党の候補が確定した12月初めから約3カ月間の大統領選挙レースで、両候補の支持率は常に伯仲してきたが、政権交代に対する国民の熱望は常に50%を超えていた。このため、「国民の力」の李俊錫(イ・ジュンソク)代表はメディアとのインタビューで「支持率が10%ほどリードしている」と公言していたし、党としても選挙当日まで6%以上の差をつけて李在明(イ・ジェミョン)候補を圧倒できると分析していた。

 しかし実際に韓国国民が下した審判は、世論調査の結果とはかけ離れたものだった。

「保守vs進歩」の構図で見れば進歩が勝利

 最終得票率は、尹錫悦氏が48.56%に対して、李在明氏が47.83%。たったの24万7000票差で、歴代大統領選挙の中で最も少ない票差だった。

 他の候補者に目を向けると、共に民主党と戦略的協力関係だった進歩系野党「正義党」の沈相奵(シム・サンジョン)候補が80万票を獲得した。もし沈氏が李在明氏と一本化を果たしていたら、勝敗は覆されたかもしれない。もう少し踏み込んで言えば、保守vs進歩という構図で見れば、進歩側がわずかの差で勝ったと見ることができる。

 そのことを考えれば、尹錫悦・次期大統領の保守的な外交公約や労働公約が、韓国国民から強い支持を得られるかは大いに疑問だ。THAADの追加配備、日米韓間の協力強化、労働市場の柔軟化などの政策は、国民の支持を得ることに苦労することになるだろう。