大接戦の韓国大統領選を制し支持者の前でこぶしを突き上げて見せる尹錫悦氏(3月10日、写真:AP/アフロ)

 2022年3月9日投開票の韓国大統領選挙は、大接戦の末、野党・国民の力の尹錫悦(ユン・ソギョル=1960年生)氏が当選した。

 選挙期間中に吹き続けた「政権交代」を求める追い風に加え、選挙戦最終盤に有力野党候補一本化まで実現したが、わずか25万票差の大接戦だった。

 大統領選挙の投開票日だった3月9日。韓国の有権者は憂鬱なニュースを聞いた。

 午前零時時点で、韓国での新型コロナ新規感染者数は34万2446人で過去最高を更新した。累計感染者数も520万人になった。

コロナ新規感染者34万人

 新型コロナ対策は、文在寅(ムン・ジェイン=1953年生)政権が「K防疫」と呼んだ数少ない成果だった。ところが、今や世界で最も新規感染者が多い国になってしまった。

 ここ数カ月、コロナ対策も国民のストレスの対象になっていた。

 大統領選挙の期間中、ほとんどの世論調査で「政権交代」を求める声が50%以上に達していた。

 不動産、雇用、外交安保に加えてコロナ対策まで・・・野党の尹錫悦氏は、多くの分野で政府と、与党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン=1963年生)氏を攻め立てた。

 一時は、世論調査で大きくリードしていた尹錫悦氏だったが、結果は大接戦だった。

2022年韓国大統領選挙(3月9日投票)

尹錫悦       1639万4815票(48.56%)
李在明       1614万7738票(47.83%)

 大統領直接選挙などを定めた現行憲法下で1987年以降実施された大統領選挙で最も票差の少ない結果となった。

 筆者は、韓国で大統領選挙を見るのは6度目だ。尹錫悦氏が当選し、午後11時頃には大勢が判明するのではと勝手に思い込んでいた。

 開票速報が始まると李在明氏が最初は大きくリード。「まさか、初めて予想が外れるのか?」と思った時間帯もあった。

 日付が変わる頃に尹錫悦氏が追い付いたが、なかなか決着がつかない。

 KBSが当選有力を打ったのは3月10日の午前2時13分、当選確定と報じたのはさらに1時間後だった。

 尹錫悦候補は党本部で当選挨拶をしたのは午前4時過ぎになった。