ソウル駅に設置された事前投票所には長蛇の列ができた(3月4日、写真:YONHAP NEWS/アフロ)

「投票直前に毎日、他のニュースがトップを占めたことかあったか?」

 3月9日投開票の韓国大統領選挙前の最後に週末にトップニュースを占めたのは、韓国東部地域などで発生した大規模な山火事だった。

 ウクライナ、オミクロンと並ぶ大ニュースのなか、4日と5日にはそれでも過去最高の1600万人が事前投票を済ませた。

「昼食に外に出たらすごい行列だった。事前投票所にこんなに人が多いのを初めて見た。少し歩いたらまた行列。こちらは新型コロナの検査のための行列だった」

事前投票とコロナ検査の長い行列

 2022年3月4日、筆者の知人がソウル市庁周辺の様子をこう話してくれた。この知人も事前投票を検討していたが、長い行列を見てあきらめたという。

 3月4日と5日、全国で大統領選挙の事前投票を実施した。

 デジタル化が進んだ韓国では、有権者は全国どこの投票所に行っても住民登録証など写真付きの身分証明書があれば事前投票ができる。

 2014年の統一地方選挙から始まった制度だ。今回は全国で全有権者の36.93%にあたる1632万人が投票を済ませた。

 2017年の大統領選挙(26.06%)、2年前の総選挙(26.69%)を10ポイント以上上回る過去最高の投票率だった。

 韓国南西部の全羅南道では51.45%だった。有権者の2人に1人以上がすでに投票を済ませたことになる。

 どうしてこれほど事前投票率が高かったのか。