3月4日、地元・釜山で期日前投票を行った尹錫悦氏(写真:AP/アフロ)

 韓国では先週末、次期大統領選出に向けた国民の選択が始まった。3月9日の大統領選を前に、4日、5日の2日間で期日前投票が実施され、歴代最高の36.9%の投票率を記録したのだ。約4419万人の有権者のうち、実に約1600万人がすでに投票を済ませた。

 投票当日に投票が困難な人々のために行われる期日前投票は、住所地の投票所でのみ可能な本投票と違い、身分証を持参すれば全国どこでも可能だ。韓国政府が投票率向上のために期日前投票を積極的に広報していることに加え、今年は新型コロナで本投票ができないかも知れないという心配も重なって、歴代最高を記録したのだ。

 期日前投票率を地域別にみると、全羅南道、光州市、全羅北道など、現政権の支持が強い地域では特に高かった。一方、伝統的に保守系政党への支持が強い大邱市をはじめとする慶尚道圏は全国平均を下回っている。これは、保守層の一部で、期日前投票による不正選挙を主張する声が広がっているからだろう。

韓国社会で根強い「不正選挙論」

 2020年4月の総選挙では、与党の「共に民主党」とその比例代表用の衛星政党とで180議席を占め、過半数をはるかに上回る議席を獲得した。一方、保守野党の「未来統合党」(現国民の力)は103議席で歴史的な敗北を喫した。ただ議席数では大きな差を見せているが、両党の全体得票率は、共に民主党が49.9%、未来統合党が41.4%と、わずか8.5%の差だった。小選挙区の多くで、わずかな得票の差によって当落が分かれたのだ。

 この当落を大きく左右したのが期日前投票だったと言われている。本投票でリードしていた未来統合党の候補らが期日前投票箱の開票が始まった後、民主党候補らにわずかな差で逆転され落選したのだ。

 これが保守系政党支持者の一部が現在も主張している「2020総選挙における不正選挙論」の核心だ。ここに、期日前投票での得票率が全選挙区にわたって一律的なパターンを持っているという主張がなされ、そこに一部専門家が同調するなどして不正選挙論が大きな注目を集め、現在もそれを信じる保守系政党支持者の多くは、期日前投票ではなく本投票で一票を行使するという考えを強く持っている。