3月3日、ソウル市内で演説する李在明氏。この日、大統領のポストを争う尹錫悦氏と安哲秀氏による一本化が成立したと発表された(写真:AP/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 3月9日の韓国大統領選挙まで残り1週間を切った。韓国では3日以降に行われる世論調査は、選挙後まで公表禁止となるため、現在公表されている調査結果が選挙前に出される最後のものとなる。

 大統領選に出馬していた主要候補は以下の4名だ。

 与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)氏、保守系で最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏、保守系野党「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)氏、革新系野党「正義党」の沈相奵(シム・サンジョン)氏である。

 これまでの大統領選挙では、最後の世論調査の結果が反映されるケースが多かった。今回については多くの世論調査で尹錫悦氏優位の結果が出ているが、二番手につける李在明氏との差は極めて小さく、予断を許さない状況にある。

 ただ、これから李在明氏が支持を伸ばし、尹錫悦氏を逆転する要素がなかなか見いだせないのも事実である。ロシアのウクライナ侵攻やコロナの感染拡大は李在明氏にとって悪材料となりかねない。

 そうした中、3日朝、尹錫悦氏と安哲秀氏が候補の一本化で合意との報道があった。これまでも政権交代のためには両候補による一本化の必要性が叫ばれてきたが、安哲秀氏は世論調査を使った予備選の結果に基づく一本化を提案、これに尹錫悦氏が慎重な態度をとってきたため一本化は実現してこなかった。そのため「両候補の一本化は困難」との見方が支配的になりつつあった。

 それが急転直下、安哲秀氏が選挙戦を降りる形で尹錫悦氏への一本化が実現した。4日からは期日前投票が始まる。ギリギリのタイミングでの合意だった。

3月3日、大統領選での野党候補一本化を発表し、握手する尹錫悦氏(左)と安哲秀氏(写真:AP/アフロ)