家具大手イケアや米コカ・コーラなど、開放性の象徴であるブランドは事業を閉鎖した。配給制になった品物もある。

 西側の輸出業者は生産に欠かせない部品の出荷を見合わせ、工場が操業休止に追い込まれている。

 エネルギーへの制裁――今のところは内容が限定的――は、ロシアの輸入代金決済に必要な外貨の流入を抑制する恐れがある。

 そして、かつてスターリンがやったように、プーチン氏はロシア近代化の大きな原動力であるブルジョアジーを破壊している。

 こうした資本家階級はグラーグ(強制労働収容所)に送り込まれる代わりに、トルコのイスタンブールやアルメニアのエレバンといった都市へ逃げている。

 ロシアに留まることを選んだ人々は、言論や集会の自由の制限によって黙らされている。今後は高インフレや経済の混乱によって打ちのめされる。

 彼らはほんの2週間で自分の国を失ってしまった。

スターリンとは似て非なる指導者

 スターリンは経済が成長する土地に君臨した。いかに残忍であったとしても、本物のイデオロギーを頼りにした。

 非道な行為に手を染めながらも、ソビエトという帝国をまとめ上げた。

 ナチスドイツに攻撃された後には、自分の国の信じられないほど大きな犠牲に救われた。ソ連はほかのどんな国よりも、戦争に勝つために多大な努力をした。

 プーチン氏にはこうした強みが一つもない。好んで始めた戦争に勝てず、国民を疲弊させているだけではなく、政権にはイデオロギーの中核がない。

「プーチン主義」なるものはあるが、あれはナショナリズムとオーソドックスな宗教を混ぜ合わせただけのテレビ受け狙いの代物だ。

 11のタイムゾーンにまたがるロシアの各地域ではすでに、あれはモスクワの戦争だとする不満が漏れている。

 プーチン氏が犯した失敗の規模が明らかになるにつれ、ロシアは今回の紛争で最も危険な局面を迎える。