2月10日、フィギュアスケート男子フリースタイルに臨む羽生結弦選手(写真:ロイター/アフロ)

 不可解なことも多かった北京冬季五輪だが、羽生結弦の華麗な舞と純粋な人間性にはあらためて心を打たれた。五輪3連覇の期待がかかったもののフィギュアスケート男子シングルは4位。ショートプログラム(SP)ではリンク上にできた穴にはまり込んで4回転サルコーが1回転となる不運に見舞われ、ジャンプの回転不足となり得点を伸ばせず8位と大きく出遅れた。

 それでもフリーの演技では臆することなく前人未到のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ=4A)の壁に挑み、国際スケート連盟(ISU)からジャンプの種類として世界で初めて認定される快挙を達成したが、転倒して成功には至らず3連覇を逃した。五輪3大会連続の表彰台も叶わなかったとはいえ、最後まで自身のテーマを追求し続け、集中力を途切らすことなく4位入賞にまで這い上がった猛奮起は大いに称賛されるべきである。

整氷作業がなぜ「あざとい」のか

 20日に北京五輪が閉幕し、大会終了後も羽生ロスにあえいでいる人は少なくないだろう。北京五輪以降の活動は未定のままで、3月の世界選手権出場も「自分の中でもけじめがついていないところもあるので総合的に判断して決めたい」と保留にしている。日本のみならず世界中が羽生の去就・決断に注目している状況だ。

 しかしながらSNSや一部ネット上には北京五輪における羽生の一挙一動にケチをつける雑言も見聞きする。日本のメディアでも取り上げられていたが、エキシビション前日19日の公式練習終了後にスタッフやボランティアとともにパンダの帽子を被りながら整氷作業へ飛び入りで参加した羽生に対して誹謗中傷まがいの心ないコメントを書き込む人も実は今でも少なくない。

 現地・中国の複数の主要メディアでも美談として扱ったエピソードであるにもかかわらず、日本のアンチファンとおぼしき人たちは整氷作業への参加がSPで失敗の原因となった“氷の穴”への当てつけと勝手に決めつけた挙げ句、あろうことか「卑しい」「あざとい」「狡猾」などと根拠のない罵詈雑言を浴びせている。