一方の「国民の力」尹錫悦候補も、選挙遊説で国民を扇動するような発言を多発している。

「ヒトラーやムッソリーニのようなファシストをご存知ですよね? この人たち(李在明陣営)の、自分の過ちにはふたをし、他人に対してはやってもいないのに罪を被せる能力は世界最高です。共産主義者の手法です」

「(共に民主党は)大倉洞(疑惑の)腐敗勢力のドンを大統領候補に選ぶような突然変異政党、病める政党です!」

尹錫悦氏(写真:Penta Press/アフロ)

「前政権の積弊清算捜査はやるべき」

 李在明、尹錫悦の両陣営間で誹謗中傷が激しく飛び交う中、ここまで「厳正中立」を貫いてきた大統領府が突然、この醜い選挙戦のただ中に飛び込んできた。発端は「中央日報」による尹錫悦氏のインタビューだった。

 尹氏は9日、中央日報とのインタビューで、「政権を握れば前政権の積弊を清算する捜査をするのか」という質問に対し、「やるべきでしょう。文在寅政権下で不法や不正を犯した人々も法に基づき、システムによって相応の処罰を受けなければなりません」と答えた。

 大統領府はこれに直ちに反発した。9日、複数のメディアに「非常に不適切で非常に不快だ。堂々と政治報復を宣言する候補は初めて見た」という大統領府関係者の発言が掲載された。

 10日には文大統領も前面に出た。朴秀賢(パク・スヒョン)国民疎通官が文大統領の言葉として、「現政権を根拠もなく積弊捜査の対象および不法行為を犯したかのような立場に追いやったことに対して、強い怒りを表し、謝罪を求める」と伝えた。

 文大統領の謝罪要求に対し、尹氏は一歩も退かなかった。