「文大統領も常に法と原則によって権力型不正や腐敗を処理すべきと強調してきた。私も全く同感だ」

「国民の力」サイドは、大統領府や文大統領の反応に、「大統領の明白な選挙介入だ」と批判した。

 これに大統領府は「影響力を行使するのではなく、一種のフェイクニュースに対する釈明として正当な反論権を行使するだけ」「潔く謝罪すればいいこと」と反発した。

「尹錫悦大統領」誕生なら文在寅政権幹部に捜査のメス

 一発ずつやりあった大統領府と尹氏との対立は、大統領選挙の構図を変えつつある。もはや、「李在明vs尹錫悦」ではなく、「文在寅vs尹錫悦」の構図になりつつあるのだ。その結果、李在明氏には不利な状況が出現した。尹錫悦候補の支持率が李候補の支持率を誤差範囲外でリードする世論調査が頻出するようになったのだ。文大統領が任期末に支持率40%を超える“人気大統領”とはいえ、逆に文在寅政権を支持しない割合も50%台半ばを記録しており、政権交代を望む国民が政権支持層を圧倒しているためだ。

 文在寅大統領は過去、「積弊の清算」を自分の大統領選挙公約に掲げ、政権獲得後はそれを国政課題の最優先事項とした。そうして元大統領から最高裁判事、大統領府秘書室長、首席秘書官、国家情報院長、長官、次官、国会議員、軍将官、各省庁の公務員に至るまで、約200人を拘束し、1000人以上を捜査してきた。この過程で保守政権の関係者5人が自殺に追い込まれている。

 2年間、文大統領の命を受け、前政権に対する積弊捜査を陣頭指揮してきた人こそ、検事総長だった尹錫悦氏だが、結局、尹氏は使い捨てにされた。尹氏をトップとする検察が曺国(チョ・グク)元法務長官と文在寅政権の積弊について捜査を始めると、秋美愛(チュ・ミエ)法務長官(当時)を前面に出して、尹氏を検察から追い出してしまった。

 検察を追われた尹氏が政界への転身を宣言すると、夫人のキム・ゴンヒ氏と義母の数年前の疑惑まで暴き出しては、検察、警察、公捜処を総動員して捜査に熱を上げている。ただし、残念ながら、いまだ起訴できそうな証拠は何一つつかんでいない。