軍が実権を掌握しているミャンマーへの対応を巡って、東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国間に大きな亀裂が走っている。議長国カンボジアのフン・セン首相の独断専行を各国が糾弾、するとフン・セン首相は自分に非難の矛先を向けたマレーシア外相に不満を漏らす事態になっている。
ASEANは毎年加盟10カ国が国名のアルファベット順に持ち回りで議長国を務め、外相会議をはじめとする各閣僚会議、さらに首脳会議などの各種会議で議長として準備・根回し・取りまとめを務める。
2021年10月の首脳会議を経て、議長国はブルネイからカンボジアに移った。それと同時に、ASEANによる仲介・調停工作が停滞しているミャンマー問題に対しそれまで静観していたカンボジアが、突如積極的に動き始めたのだった。1月7、8日にはカンボジアのフン・セン首相がミャンマーを電撃訪問し、軍政トップのミン・アウン・フライン国軍司令官と会談した。
フン・セン首相には、ミャンマー問題を担当するASEAN特使として新たに任命されたカンボジアのプラク・ソコーン外相も同行していた。そのプラク外相は、ミャンマー問題解決の道筋を協議して「成果があった」と記者会見で事態の前進を強調した。
「スタンドプレー」と批判浴びるフン・セン首相のミャンマー訪問
ただ、このフン・セン首相のミャンマー訪問はASEAN加盟国のコンセンサスを得たものでなかった。そこで「独断専行」「スタンドプレー」としてマレーシアやシンガポールから強く批判される事態となった。
シンガポールのリー・シェンロン首相は1月14日、フン・セン首相のミャンマー訪問にはなんら進展がなかったとして、フン・セン首相が主張している今後の各種会議にミン・アウン・フライン国軍司令官や軍政幹部を「ミャンマー首脳・閣僚」として招くことへの反対を表明。
またマレーシアのサイフディン・アブドゥッラー外相は、「フン・セン首相はミャンマー訪問に先立ち、ASEANの他の首脳と協議すべきだった」と独自の行動を批判した。
さらにはフィリピンのテオドロ・ロクシン外相も「ASEANとしてのコンセンサスはカンボジアが主張するいかなるロードマップにも縛られてはならない」と強調、フン・セン首相への不快感を示したのだった。