嘉手納基地。2017年4月12日撮影(写真:ZUMA Press/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 これが同盟国のすることだろうか。

 政府は、沖縄県と山口県、広島県に新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」を適用する。

 沖縄県では6日、新規感染者数が981人となり、それまでの最高だった8月25日の809人を大幅に上回った。同県の直近1週間の人口10万人当たりの新規感染者数は141.81人で全国1位。2位は山口県の22.21人、3位は広島県の14.01人。5日時点での全国平均は4.84人だった。

 これだけ急速に感染が拡大した原因は、米軍基地の存在だ。

沖縄県知事や外相の要請も無力

 とりわけ、沖縄県の米軍海兵隊基地キャンプ・ハンセンでは、先月から200人を超すクラスターが発生していたにもかかわらず、具体的な措置をとらなかった。同時に感染が確認された基地従業員や軍属からは「オミクロン株」が検出されている。しかも、その基地からマスクもせずに米兵が市中に出て、普通に買い物をして、酒をあおっていた。

 その状況について私は、キャンプ・ハンセンのある金武町の元町長で、沖縄県の基地問題担当の政策参与も務めた吉田勝廣氏から話を聞いていた。いまも金武町に暮らし、沖縄の基地に精通した人物だ。

 吉田氏によれば、キャンプ・ハンセンの様子を双眼鏡で眺めると、クラスターが発生しているというのに、ほとんどの人たちがマスクをせずに作業や訓練をしていたという。そこからそのまま、同基地のメインゲートの前にある金武町の繁華街に出てくる。マスクもしていなければ、規定もなかった。

 沖縄県で最大の嘉手納基地には、旅客機も離発着している。米兵やその家族を運ぶためだ。基地に直接降りたってしまえば、日本の空港検疫の対象とならない。日米地位協定によって、旅券やビザに関する国内法の適用が除外される。だから、日本政府がオミクロン株対策として、全ての外国人の新規入国停止など水際対策を強化したところで意味はない。

 しかも吉田氏によると、基地でも到着後の待機隔離期間があるとはいうが、その規定も曖昧で、確実にはやっていないという。その米兵がバスでキャンプ・ハンセンにも送られてくる。同基地の約80%は新兵。出国前のPCR検査もなければ、入国後の検疫も免除されて、基地に配属されると、そのまま市中に出てくる。繰り返すが、マスクもしていない。それで酒を飲んで、おしゃべりをして、ダンスをして楽しむ。基地関係者を客に持つ店では、コロナ対策も徹底されない。