竹島(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 11月17日、ワシントンで開かれていた日米韓の3カ国外務次官協議の後に予定されていた共同記者会見が急きょ中止され、代わってウェンディ・シャーマン米国務副長官が3カ国を代表し単独会見を行った。

 シャーマン副長官は会見でその経緯について「日本と韓国の間には解決しなければならに2国間の違いがある。そのために形式を変更した」と述べた。見解の違いの中身については言及しなかったが、次官協議に参加していた韓国外交部の崔鍾建(チェ・ジョンゴン)外交部第一次官は、「日本側が金昌龍(キム・チャンリョン)警察庁長官の独島(竹島の韓国名)訪問(日本では上陸と表記)問題で会見に参加できないという立場を伝えてきた」と説明した。

 多くの国が参加する国際会議では、ホスト国が出席者全員に代わって会見することはあるが、わずか3カ国の協議で、しかも事前には3者の共同会見を行うと説明されていたのが、突然中止されるのは異例である。

 それが日本側の意志によってなされたというのが事実なら、これまた極めて特異なことだ。

「日本が米国のメンツをつぶした」という単純な問題ではない

 韓国の中央日報は、産経新聞が「シャーマン氏は次官協議を『建設的』だったと述べたものの、ホスト国としてはメンツをつぶされた格好だ」と、日本が米国のメンツをつぶしたと報道したことを紹介しつつ、これまで日米韓協力を強調してきた日本が3カ国による共同会見参加を拒否したのは「『(日本に)新政権が発足してすぐに韓国が独島問題に触れたことを相当不快に感じている』との解釈が出ている」と伝えている。

 しかし、このような分析は極めて単純な見方と言えよう。そうした近視眼的な分析しかできないことこそが韓国の問題である。今回、日本政府が厳重抗議の姿勢を貫いたのは、韓国の竹島をめぐる姿勢が時を追うごとに一層強硬になり、韓国政府まで国民感情を刺激し続けてきたからである。

 言うまでもなく竹島は日本の領土である。それが日本政府の主張である(北朝鮮も領有を主張している)。それを韓国は第二次大戦後に「李承晩ライン」を勝手に設定し、竹島を自国領だと主張し出した。そればかりか武装警察を常駐させ、実効支配するという行為に出ている。

 そして韓国は、日本の竹島領有権の主張そのものを否定し、日本が竹島の領有権を主張するいかなる行動にも激しく反発している。東京オリンピックの際、聖火リレーのコースの地図に竹島を小さく含めたことにも猛烈に抗議した。韓国は日本の抗議を封じ竹島支配を既成事実化しようとしているのである。

 さらに言うなら、韓国与党の次期大統領の有力候補である李在明氏は、依然として日韓の国交正常化過程に不満を持ち、日本の朝鮮半島分断責任論を主張、さらに日本は敵性国家だとまで述べている。竹島問題をめぐって東京オリンピックボイコットまで主張した人物である。同氏が大統領になれば、竹島問題が一層先鋭化することは必定である。