衝撃の「不倫告白」をした彭帥。写真は2014年9月、USオープンでの準々決勝で勝利したときのもの(写真:ロイター/アフロ)

 11月2日の深夜、中国のネットやSNS上が騒然となった。あの強権国家の中国では大変珍しい「不倫スキャンダル」が巻き起こったのである。

「主役」は、中国共産党の最高幹部の一人だった張高麗(ちょう・こうれい、75歳)と、中国を代表する美人テニスプレーヤーの彭帥(ほう・すい、Peng Shuai、35歳)。彭帥が一大決意をして、自分の微博(中国版ツイッター)で、二人の「ただならぬ関係」を暴露したのだ。

 彼女の微博は、直ちに中国当局によって封鎖された。だが、それ以前に瞬く間に、中国全土に拡散していった。私のところにも転送されてきたほどだ。

 私は彼女の「決意の告白」を読んだ当初、中国で散見される「ニセ情報」かと思った。だが3日の明け方になって、中国と対立する台湾のメディアが、一斉に報じ出した。これは「ニセ情報」ではなくて、「世紀の不倫スキャンダル」だったのである。

ロボットのような男

 まず、二人が中国でどれほどのVIPかをお伝えしよう。張高麗は1946年、福建省普江生まれ。地元のアモイ大学経済学部を卒業後、石油部傘下の広東茂名石油公司に就職する。石油会社でトントン拍子に出世した後、1985年に広東省経済委員会主任に昇格。1997年に経済特区の深圳市党委書記に、翌年、広東省党委副書記になった。2002年に山東省党委書記、2007年に天津市党委書記兼党中央政治局委員(トップ25)と、出世の階段を駆け上がっていった。

 そして2012年11月、いまの習近平総書記を選出した第18回中国共産党大会で、党中央政治局常務委員(トップ7)に選ばれた。翌年3月には、正式に発足した習近平政権で、副首相にも就いた。