香港映画界のトップスターだったブルース・リー。写真は、2013年7月、香港文化博物館で開催されたブルース・リー没後40年の記念展において、ブルースの巨大なポスターとその前で撮影に応じる彼の娘シャロン・リー(写真:ロイター/アフロ)

 もう何度目か知れない「香港の死」という言葉を、今日もまた使わねばならない。

 10月27日、「映画検閲(改正)条例案2021」(Film Censorship [Amendment] Bill 2021)が、香港立法会で可決した。

 香港には一応、1988年に施行された「映画検閲条例」があったが、これまで「映画製作の自由」は、ほぼ全面的に保証されてきた。自由や民主をテーマにしたドキュメンタリー映画も、数多く作られてきた。それが今回の改正は、中国大陸の法律に準拠した厳しい内容となったのである。

「映画は共産党政権の宣伝物」

 例えば、以下のような文言が入っている。

<映画の内容が国家安全の利益に反していると政務司長(CS)が判断した場合、政務司長に、その映画の承認や免除の資格を取り消す権限を付与する>

<違反者には100万香港ドル(約1460万円)以下の罰金、及び3年以下の禁固刑を科す>

 中国大陸では現在、「習近平思想」(習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想)に基づいて、「映画は共産党政権の宣伝物」という発想で製作することが求められている。これは「人民解放軍とメディアは中国共産党を支える二本の剣である」と述べた毛沢東主席の思想を踏襲する考え方だ。