(福島 香織:ジャーナリスト)

 10月23日に行われた第13期全国人民代表大会(全人代)第31回会議で、国務院(内閣に相当)による「不動産税」(固定資産税)導入を、一部地域における改革パイロットテストケースとして実施することを決定した。

 この決定がひょっとすると現代の「土地改革」と言っていいほどに中国社会経済に大きなインパクトを与えることになるかも、という予測もあり、国内外が固唾をのんで見守っている。

上海と重慶のテストケース

 中国ではこれまで、日本人がイメージするような固定資産税はなかった。現在、不動産にかかる税金は、たとえば開発段階でかかる耕地占用税や、不動産取引に伴って科される土地増値税や契約税、譲渡に伴う収入にかかる所得税や増値税だ。不動産保有自体に毎年かかる税金としては、企業が土地面積に応じて支払う微々たる土地使用税や、土地取得原価の7~9割に対する1.2%程度の土地保有税ぐらいだった。企業の不動産所有に課せられる税金のなかでは、たとえばテナント料収入に対する12%課税が税率としては最も大きい。

 個人所有の不動産保有に対する税金というのは、これまで原則としてなかった。2011年に上海市と重慶市で導入されたが、あくまでテストケースである。しかも、上海と重慶の不動産保有税というのは、いわゆる投機目的不動産、豪邸が対象だった。たとえば上海では、自宅使用目的外に新たに購入した不動産が対象で、1人あたり面積60平米以上の不動産に対する課税だった。税率も取引価格の7割に対する0.4~0.6%という低いものだ。重慶では、別荘など100平方メートル以上の新規購入高級住宅について、取引価格の7~9割に対して最大1.2%の税金がかかる。こうした不動産保有税、つまり固定資産税の上海市や重慶市への税収への寄与は3%あるかないか程度で、住宅価格への影響もなかった。