――刑務所内で買い物はできたのですか。
片岡 便箋、封筒、ボールペン、写真立てなどを買いましたね。下着、長袖のシャツ、運動靴、その他日用品も買うことができるのですが、私の場合は、刑務所が揃えてくれるもので足りました。
無実を証明するため再審請求を
――ご家族との連絡の手段はありましたか。
片岡 女房や娘がたびたび面会に来てくれました。緊急事態があった場合は、女房の方から刑務所に電報を打つことは可能なのですが、こちらからは電報は送れません。私のほうから出せる手紙は1カ月4通まで、便箋の枚数もひとつの封筒に7枚までと決められていました。独居房の中には写真の持ち込みだけは許されていたので、それを布団の中で見るのだけが唯一の楽しみでしたね。女房から届く手紙の中にも家族の写真が入っていて、出所するときには全部で100枚くらいになっていました。
――1年4カ月ぶりに出所されたとき、何を感じられましたか。
片岡 とにかく、自由ほど贅沢なものはないと思いました。そして、とにかく温かいものが食べたかった。刑務所で出された食事は麦が7割混ざっていましたが、美味しくは食べられました。でも、おかずが冷たいのが辛かったんです。出所して、帰り道の高速道路のパーキングエリアで女房や娘と食事をしたのですが、最後にホットコーヒーが出てきたとき生き返った気がしました。温かいコーヒーというのは、生理的に気持ちを落ち着けてくれるものだと、あのとき本当にそう思いましたね。
――「高知白バイ事件」の発生から、今年で15年が過ぎました。片岡さんは今も無実を訴えて、再審請求の準備をされているそうですね。
片岡 はい。この事故では、警察が複数の目撃証言や証拠を無視して一方的な捜査をし、検察官も裁判官も、全て「片岡が犯人」という判断を下しました。警察は現場検証時の写真のネガすら出してきませんでした。私は、あのときバスに乗っていた22名の生徒たちのために、そして亡くなった白バイ隊員とご遺族のためにも、真実を訴えていくのが自分の責務だと思っています。そして、ドライバーやライダーの方々には、交通事故における「実刑(禁錮刑)」の現実を知っていただき、ぜひ安全な運転を心がけていただきたいと思います。
――ありがとうございました。