――毎日、どのような時間割での暮らしだったのですか。

片岡 朝6時半に起床し、布団を上げたら整理整頓。居室衣に着替えて、洗顔、歯磨き、用便を済ませ、「点検始め!」という号令がかかると、正座をして、朝食が配膳されてくるのを待ちます。それぞれの受刑者につけられた照合番号が呼ばれると、房の扉自体は開けずに、手が入るくらいの食器口からご飯とおかずを受け取ります。7時頃には朝食を開始し、終わったら食器を洗い、食器口に戻す、という流れです。私の場合、加古川刑務所では934番、高知では720番と呼ばれていました。

――午後からの生活はどのような流れでしたか?

片岡 12時に昼食の配膳が始まり、朝と同じく食器口から運び込まれます。その後は、また独居房で座り続けます。そして16時、懲役の受刑者たちの作業が終了すると、夕方の点検が始まり、16時20分から夕食の配膳が始まります。16時45分くらいには夕食が済んでしまうので、それ以降は余暇時間となります。FMラジオだけは、17時半から21時まで房のスピーカーから流れてくるのですが選局はできません。横になった状態では本を読むことも許されていませんし、とにかく夜の時間が退屈で長かったですね。

週に2回の入浴が唯一の楽しみ

――冷暖房はないのですよね?

片岡 ありません。家電物とは全く無縁の生活でした。冬はとにかく寒く、身体を起こしていられないので、17時には布団の中に入るんです。手のひらがかじかんで、だんだん痺れた状態になってくるので、お茶の配給があったらそれをポットからやかんに移して、そこに手をあてて暖をとっていました。あとは、配給された3枚の毛布と布団にくるまって寝るだけ。毛布をかけて寝ていると、それなりに暖かかったですけれど、逆に夏は暑かったです。窓は網戸になっているので、風もちょっとは入るんですが、それでも暑い。刑務所の方でうちわを配ってくれたのが、唯一涼をとる手段でしたね。

――刑務所での生活で、楽しみといえばなんでしたか?

片岡 唯一の楽しみは、週に2回の風呂でした。小さなユニットバスに一人ひとりが入るのですが、入浴時間は15分、お湯かけは14杯までと決まっていました。身体には6杯、頭には3杯、合計で14杯です。冬は湯船に湯が張ってあるのでシャワーは使えません。とにかく、大急ぎで体を洗って湯船に少しでも長く浸かっていたい・・・、湯船に入っているときだけが極楽でしたね。でも、入浴中も監視付きです。刑務所の中では監視がないという時間は全くなかったと言っていいでしょう。独居房にいるときでも、頻繁に回ってきていましたから。どこへ行くにも何をするにも、人間として24時間他人にのぞかれ、監視され、独居房の窓から青空は見えるけれども、外へは出られないのです。そうそう、ご飯は正月三が日だけ特別で、お菓子とおせち料理の折詰、そしてお雑煮が出ました。それはうれしかったですが、たったひとりで食べるおせち料理は、本当に寂しかったです。