韓国の文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 韓国で、言論の自由を脅かしかねない「言論仲裁及び被害者救済などに関する法律」(以下、言論仲裁法)改正案の取り扱いが大きな問題となっている。

 与野党が対立する中、朴炳錫(パク・ビョンソク)国会議長は、与野党が激しく対立するこの改正案について、本会議での採決を8月30日まで延期したが、それでも与野党の調整が整わなかった。そこで与党「共に民主党」(以下、民主党)と最大野党「国民の力」の院内代表を集め協議した結果、ひとまず臨時国会中の採決を断念し、次期通常国会中の9月27日に本会議に上程することで合意した。

 また、この会合では同法案の本会議上程に向け与野の調整を行うべく、両党の国会議員各2人と専門家各2人とで構成する「協議体」を設置して議論を続けることも確認したという。

ひとまず国会上程は延期されたが・・・

 ただ「採決延期」の合意は成立したが、両党の法案に対する姿勢には依然として大きな隔たりがある。

 民主党の尹昊重(ユン・ホジュン)院内代表は「偽ニュースによる被害を受ける国民を救う道を開くことで両党が合意したことに意味がある」「協議体で円満に討論する」と述べ、法案の成立に一歩前進したと評価した。

 他方、国民の力の金起鉉(キム・ギヒョン)院内代表は「(採決を)1カ月間延期したが、依然として問題は進行形として残っている」「自由民主主義の体制を守る最も大きな基準は表現の自由であり、国民の知る権利はいかなる場合にも保証されなければならない」と述べた。法案の成立が既成事実化されたわけではなく、採決を延期したことに意義があるとの立場を強調したのだ。